2017年10月29日(日)、中部国際空港を拠点とするLCCエアアジア・ジャパンが中部~新千歳線の運航を開始しました。名古屋から日本の空を変えようと挑む「日本第5のLCC」エアアジア・ジャパンの初便のフライトレポートをお届けします!
おかえり「エアアジア・ジャパン」!再参入までの歴史を振り返る
エアアジアグループのLCC「エアアジア・ジャパン」が2017年10月29日、中部~新千歳線の運航を開始しました。日本の空に約4年ぶりにエアアジアが戻ってきたことになります。
エアアジア・ジャパンのこれまでの歴史を簡単に振り返ってみましょう。
2012年8月1日に運航を開始した初代「エアアジア・ジャパン(JW/WAJ)」。2013年6月28日にANAホールディングスとの合弁を解消し、2013年10月26日に運航を終了。日本の空を飛んでいたのはわずか1年3か月と短い期間でした。日本ではまだLCCが就航したばかりで周知も限定的だったこともあり、当時は乗る機会がなかったという方も多いのではないでしょうか?
日本の空への再参入を目指し、エアアジアは2014年7月1日に「エアアジア・ジャパン株式会社」を設立。この会社にはエアアジアのほか、楽天、ノエビア、アルペンなど日本の企業が出資しています。
その後、エアアジア・ジャパンは運航拠点を中部国際空港セントレアとすることを決め、2015年7月21日に国土交通省に航空運送事業許可申請を行いました。航空輸送事業は2015年10月6日に許可されましたが、その後の審査に難航し、ようやく就航を発表できたのは2017年10月17日のことでした。
2代目「エアアジア・ジャパン(DJ/WAJ)」が2017年10月29日から運航する路線は中部~新千歳線です。当面の間はこの区間を1日2往復します。詳しいスケジュールは以下の通りです。
エアアジア・ジャパン 中部~新千歳線 運航スケジュール
・中部→新千歳
DJ001便 中部07:35発 新千歳09:25着
DJ009便 中部17:10発 新千歳19:00着
・新千歳→中部
DJ002便 新千歳10:00発 中部12:05着
DJ010便 新千歳19:35発 中部21:40着
運賃は片道4,190円~。就航を記念して「片道5円」「片道800円」などお得なセールも既に開催され、さっそくエアアジアの特徴である「低価格」を打ち出しています。
就航を記念してセントレアでレセプションを開催
就航に先立ち、2017年10月27日(金)に中部国際空港のターミナルビル内「センターピアガーデン」でエアアジア・ジャパンの就航を記念してレセプションパーティーが開催されました。
パーティでは特設ステージが設けられ、エアアジアグループの現役スタッフによる歌・ダンスの披露や、日本最大級の踊りの祭典「にっぽんど真ん中祭り」で活躍した名古屋学生チーム「鯱(しゃち)」による踊りも披露されました。
そしてレセプション会場にはエアアジアグループのトニーフェルナンデスCEOも駆けつけました。
トニー・フェルナンデスCEO「私が戦うのは日本の高い航空運賃」
トニー・フェルナンデスCEOは重さ30キロを超える黄金と紅の甲冑を身に着けての登場。これには新しい航空業界での「戦争」に勝ってみせる、という強い意志を表現したものだそうです。
トニーフェルナンデスCEOが示した「戦争」は他の航空会社との闘いではなく、「日本の高い航空運賃」ということで、2度目の参入で今度こそ日本の空を変えるという強い決意が込められています。
セントレアがエアアジア・ジャパン一色に
多くの人の期待を集めるエアアジア・ジャパン。中部国際空港セントレアのターミナルビル内も就航を記念してエアアジア一色となっています。
エアアジア・ジャパンのチェックインカウンターの横にはターミナルビルの窓を全面に活用した尾翼を模した広告を設置。
セントレアの3階出発フロアに到着した人が右手を見るとすぐにチェックインカウンターがあることが分かります。
それではここからはエアアジア・ジャパンの搭乗手続きから実際のフライトまで、記念すべき初便の搭乗レポートをお届けします!
エアアジア・ジャパンDJ001便 中部~新千歳線 初便搭乗レポート
2017年10月29日(日)午前5時半すぎ。セントレア3階のエアアジア・ジャパンのチェックインカウンターには新千歳行きの初便に搭乗する乗客で賑わっていました。
エアアジア・ジャパンのチェックインカウンターは3階出発ロビーの右奥、国内線チェックインカウンターのPカウンターになります。
エアアジア・ジャパンの国内線のチェックインは出発時刻の2時間前から開始。出発時刻の30分前には締め切られます。
搭乗ゲートは出発時間の20分前に締め切るので、早めに保安検査を通過するようにしてください。
エアアジア・ジャパンのチェックインカウンターには4台のセルフチェックイン機があります。
預け荷物のない方は、予約番号を元にこちらで発券手続きをして保安検査場に進むことができます。
チケットの裏面には企業の広告が印刷され、LCCらしい取り組みの一つです。
エアアジア・ジャパンは機内に7キロまで無料で荷物を持ち込むことができます。
大きさはハンドル・キャスター・サイドポケット等を合わせて縦56㎝×横36㎝×幅23㎝を超えないものが一つと、縦30㎝×横40㎝×幅10㎝を超えないハンドバックやPCバッグなどの小さな手荷物が1つの合計2個までです。
これを超える範囲の荷物は「受託手荷物」として有料で預けます(15キロ1200円~)。
運賃クラスの「バリューパック」や「プレミアムフィックス」は20キロまでの預け荷物が運賃に含まれているので、事前に大きい荷物を運ぶ予定が分かっている方はこれらの運賃を申し込む方がお得な場合があります。
預け荷物の申し込みをしていなかった場合、空港カウンターでは15キロで2900円、15キロ超は1キロごとに1400円が徴収されます・かなり割高なので、ぜひ事前に申し込みをしておきましょう。
今回は北海道・札幌への路線ということで、スキーやスノーボードなどウインタースポーツのグッズを運びたいと考えている方も多いと思います。エアアジア・ジャパンの場合、大きいスポーツ用品は事前購入が必要となります。料金は15キロ2100円~です。「バリューパック」「プレミアムフィックス」の運賃に含まれる受託手荷物には適応されないので、注意してください。
搭乗ゲート前ではエアアジア・ジャパンの中部~新千歳線の初便の就航を記念して、リボンカットが行われました。
リボンカットにはエアアジア・ジャパンの代表取締役社長兼CEOの秦修氏、中部国際空港長の船山利英氏、中部国際空港株式会社代表取締役社長 友添雅直氏が駆け付け、エアアジア・ジャパンの就航に期待の声を寄せていました。
そして午前7時すぎ、エアアジア・ジャパンDJ001便 中部発新千歳行きの初便の搭乗が始まりました。
搭乗ゲートではエアアジア・ジャパンの就航を記念して、記念品が配布されました。
記念品はエアアジア・ジャパンの初便搭乗証明書と、エアアジアの機体が描かれた羽二重餅、エアアジア・ジャパンに出資しているノエビアホールディングスの「眠眠打破」(常盤薬品)と「なめらか本舗」の化粧水、三井アウトレットパークのフリクションボールペン、そして各種パンフレットです。
搭乗ゲートの先にはエアアジア・ジャパンの代表取締役社長兼CEOの秦修氏をはじめに、客室乗務員らが勢ぞろい。
乗客一人ひとりに「ご搭乗ありがとうございます」「いってらっしゃい!」と声をかけていました。
こちらがエアアジア・ジャパンが使用する飛行機です。
多くのLCCも採用するエアバス社のA320-200型機(A320-216)を採用しています。
機体の外に並んでいる人を見てみると、、
その手には「ご搭乗ありがとうございます」の横断幕が。台風の影響で強い雨が降る中、笑顔で乗客にメッセージを伝える姿に心を打たれます。
この日のために関係者一同準備を進めてきたことが良く分かる光景ですね。
一方、機体の入り口ではエアアジアグループの客室乗務員らハイテンションで乗客を出迎えていました。
イベントをスタッフ自らも積極的に「楽しむ」姿は他の航空会社にはない個性を感じさせます。
こちらがエアアジア・ジャパンの機内です。定員180人の機内には初便に166名の乗客が搭乗し、搭乗率は92.2%となりました。
エアアジア・ジャパンではエアアジアグループと同じく、「ホットシート」と「スタンダードシート」の2種類の座席を用意しています。
「ホットシート」は1列目から~5列目と非常口座席(12列目・14列目)で、優先搭乗の対象です。ヘッドレストの部分が赤いのが目印です。最前列と非常口座席の「ホットシート」は足元も広々しています(前後の間隔は31インチ=約78センチ)。
この「ホットシート」は、通常運賃では600円(最前列・非常口座席は900円)、「バリューパック」では200円(最前列・非常口座席は500円)、「プレミアムフィックス」では無料で事前に指定することができます。
こちらがエアアジア・ジャパンの「スタンダードシート」です。
他社のエアバスA320型機で採用している薄型のシートとは少し形状が異なり、写真でも分かるように肉厚なクッションが特徴のシートです。
このスタンダードシートにLCC STYLE編集長の五十嵐(身長175センチ)が座った場合、膝の前に握りこぶし1つ分の空間がありました。公式データではスタンダードシート同士の前後の間隔は28インチ(約71センチ)となっています。
座席の幅は「スタンダードシート」と「ホットシート」も共通で16~17センチ(約40~約43センチ)です。座席の前後は大手航空会社よりコンパクトですが、座席の幅はほぼ同じです。
乗客の膝が当たる部分と前の席の腰の部分にはしっかり板が入っているので、他社のA320型機の一部のシートで起こる“膝ドン”現象は起こりにくい構造になっているのが嬉しいポイントです。
シートポケットにはエアアジア・ジャパンが独自に作成する機内誌の「travel3sixtyJAPAN」や機内販売のメニューなどが入っています。
機内誌にはエアアジア・ジャパンの就航地の魅力を伝える記事や、エアアジアで働く人へのインタビューなど、ここでしか読むことのできないオリジナルのコンテンツが満載です。
エアアジア・ジャパンDJ001便は午前7時53分に機体のドアが閉まり、7時57分に駐機場を離れました。
出発の準備が整うと、客室乗務員が機内の安全設備についてデモンストレーションを行いました。
そして午前8時10分、エアアジア・ジャパンDJ001便新千歳行きの飛行機が中部国際空港を離陸しました。
機体が空に舞い上がった瞬間、機内からは自然に拍手が起こりました。
約4年ぶりにエアアジアが日本の空に戻ってきた記念すべき瞬間です!
離陸から約15分後に機体は安定飛行に。シートベルトサインが消灯しました。
離陸から約30分後、午前8時40分すぎに機内販売を開始。エアアジア・ジャパンではまず事前に機内食を予約していた方から提供がはじまります。
エアアジア・ジャパンではマレーシアやタイなど東南アジアの食文化と、中部地方の食文化を取り入れた個性的な事前予約制の機内食を提供しています。以下、メニューを紹介します。
(1フライトにつき1人2食まで事前予約可能・事前予約は出発時刻の24時間前まで)
・ナシレマ(750円)
エアアジアの発祥の地・マレーシアの伝統的な料理。香り高いココナッツライスにチキンレンダン(チキン煮込み)、ゆでたまご、アンチョビとナッツのフライ、ピリ辛サンバルソースが隠し味。
・タイ風チキングリーンカレー(750円)
ココナッツミルクや、タイ料理には欠かせないスパイスや食材を使用した香り豊かなタイ風チキンカレー。柔らかなタイ米と一緒に提供。
・飛騨牛コロッケのベーグルバーガー(600円)
セントレアから北へ伸びる“昇龍道”のひとつ岐阜県。岐阜の名産品の飛騨牛を使用したコロッケをベーグルで挟んだバーガー。
・きしボナーラ(名古屋風きしめんカルボナーラ)(750円)
名古屋名物のきしめんをパスタの代わりに使用。塩昆布とカルボナーラソースの絶妙なバランスで、和風テイストに仕上げた和洋折衷のオリジナルメニュー。
・REDパンケーキ(600円)
ストロベリークリームを挟んだ赤いパンケーキをエアアジアのロゴに見立てたオリジナルスイーツ。甘酸っぱいミックスベリーも添えられます。
以上が2017年10月29日時点の事前予約制の機内食です。これらを申し込んだ場合、コーヒー・緑茶・ミネラルウォーターがひとつ無料でサービスされます。
このほか、以下のような当日での購入もOKの軽食メニューもあります。
- 大黒 しょうゆヌードル(350円)
- クノール スープDELI まるごと1個分完熟トマトのスープパスタ(350円)
- ドール ドライマンゴー(350円)
- 世界の山ちゃん 幻の手羽先しっとりせんべい(250円)
- グリコ クラッツ ペッパーベーコン(250円)
- カクダイ製菓 クッピーラムネケース入り(200円)
- ロッテ コアラのマーチ(200円)
ドリンクのメニューはこちら。ソフトドリンクやアルコールの提供もあります。
- コーヒー(200円)
- 緑茶(200円)
- 抹茶ラテ(200円)
- BOH TEA キャメロニアンゴールドブレンド(200円)
- いろはす(200円)
- 綾鷹(200円)
- コカ・コーラ(200円)
- スプライト(200円)
- ミニッツメイド 朝の健康果実オレンジ・ブレンド(200円)
- ジョージア ヨーロピアン 香るブラック(200円)
- キリン一番搾り 名古屋づくり(400円)
- キリン ハードシードル(400円)
- キリン 旅する氷結 アップルオレンジサングリア(400円)
- チョーヤ ウメッシュ プレーンソーダ(400円)
エアアジア・ジャパンでは機内食・ドリンクのほか、個性的なグッズの機内販売も行っています。
エアアジア・ジャパンが拠点を置く愛知県常滑市のキャラクター「トコタン」のグッズや、エアアジアとコラボしたステッカーを販売。お値段は1つ500~600円とお手軽。
また、エアアジアグループでお馴染みのブランケット・ネックピロー・アイマスクがセットになったキット(1500円)や、エアアジア・ジャパンの機体の150分の1サイズのモデルプレーン(4,000円)、オリジナルキャップ、キーチェーンなども販売されます。
このように魅力的な機内販売のラインナップを準備しているエアアジア・ジャパンですが、初便のフライトは台風22号の影響でシートベルトサインが点灯するシーンも多く、結局ほとんどの機内販売を提供することできずサービスが終了してしまいました。(クレジットカードでの決済者は自動的に返金処理)
セントレアを離陸してから約1時間後に飛行機は北海道へ。窓の外には雄大な大地が広がります。
着陸前には客室乗務員が念入りに荷物棚のロックや手荷物の収納状況をチェック。
安全面へのチェックもしっかり行っていました。
そして午前9時27分、エアアジア・ジャパンDJ001便が新千歳空港に着陸。駐機場には9時34分に到着しました。
訓練中、エアアジア・ジャパンの機体は何度も新千歳空港に来ていましたが、国内定期便としては約4年ぶりに北海道に戻ってきたことになります。
地域密着型の側面も エアアジア・ジャパンの今後に期待
こうして4年ぶりに日本の空に戻ってきたエアアジア・ジャパン。
台風の影響で機内サービスのすべてを体験できたわけではありませんが、中部地方の食を取り入れた機内食など、初代エアアジア・ジャパンにはなかった地元密着型の側面も感じることができました。
まだ粗削りながらも可能性の大きさを感じさせたエアアジア・ジャパンの初便のフライト。再就航までの4年間の想いがこもった特別な1日となりました。
名古屋の空、そして日本の空がどう変わっていくのか、LCC STYLEではこれからもエアアジア・ジャパンの取り組みを注目していきます!
(五十嵐 貴文)
関連URL:エアアジア 公式HP